国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
フェルディナンドは結局、兄や母とともにルティシアへ向かうことにした。

(人生最後の運試しだな)

もし家族や国に迷惑をかけることがあれば、その場で縁を切ってルティシアに残れば良い。どうせあと僅かな命だ。

内心決意して、ルティシアへと出発した。



そして、フェルディナンドは母とともに聖女と会ったのだ。

会えたのは本当に偶然と言って良いだろう。
王都をあてどなく彷徨っていたところ、本当に偶々出会ったのだ。

『どうか、この子をお助け下さいっ! 原因も治療法も分からず……どうか……』

母の必死の頼み込みに、聖女は嫌な顔一つせずフェルディナンドに治癒を施した。

きっと彼女は、フェルディナンド達が他国の人間であることに気づいていただろう。
それでも出自を尋ねることなく、フェルディナンドに手をかざしたのだ。

『もう大丈夫ですよ。今までよく頑張りましたね』

そう言いながら。



フェルディナンドと母は、彼女に心からのお礼を述べた。

当然治療費も支払おうと、相応の額を差し出した。
けれども彼女は頑として受け取らなかった。

『申し訳ありません。規則ですので。お礼は教会へ寄付をしてくださると嬉しいです』

後で知ったことだが、聖女は金品の受け取りを禁止されていた。
すべての民に平等に接するためだという建前だが、教会の取り分が減らないようにするためだろう。

『本当に気持ちだけで十分ですよ。これからは自分のために生きなさいね』

フェルディナンドは彼女のその言葉が忘れられなかった。




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