国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
翌日、フェルディナンドの宣言通り、朝から二人で街に繰り出していた。

ファイズは相変わらずにぎやかな街だ。
活気ある雰囲気を味わっているうちに、ニーナの気分も自然と上がる。

「外に出たのは良いけど、どこか行きたい場所があるの? 買いたい物があるとか?」

今日の外出を提案したのはフェルディナンドなのだから、当然行きたい場所があるはずだ。
ニーナはそう考えていた。

「いいや、特には。昨日も言っただろう? 勉強ばかりするニーナを無理矢理休憩させるための外出だって。それ以外に目的はないよ」
「えぇ?! じゃ、じゃあ今はどこへ向かって歩いているの?」

ニーナは、迷いなく歩いているフェルディナンドの腕を思わず掴む。
フェルディナンドは気にもとめない様子で、道の先を指差した。

「適当だよ。ブラブラ歩いているだけ。あ、もう一本道を越えた先に美味しいパン屋さんがあるよ。行ってみようか」

(フェルって時々、突拍子もないことをするのね……)

少しはフェルディナンドのことを分かってきたと思っていたニーナは、自分が浅慮だったと考えを改めた。

フェルディナンドはそばにいるだけで、色々な景色を見せてくれる人なのかもしれない。

「ふふっ……分かったわ、行きましょう!」

ニーナは遅れまいとフェルディナンドの腕に自分の腕を絡ませた。



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