国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
目的のパン屋に到着すると、そこには張り紙が張ってあった。

『材料不足のため休業中です。再開時期未定』

と書かれている。

「休業……残念だな」
「フェルおすすめのパン、食べてみたかったわ。また時期を改めて……あら?」

ニーナはパン屋の中からこちらを見ている人影に気づいた。

目があったその人物は、申し訳無さそうに店から出てきた。

「パンをお求めでしたか? 申し訳ありません……こちらに書いてある通りでして……」

ふくよかな男性だが憔悴しきった様子で、顔はげっそりとしていた。

ニーナは思わず男性に駆け寄る。

「大丈夫ですか? どこか具合でも悪いのですか?」

男性は力なく首を振った。

「いいえ……ここ一ヶ月程店が開けなくて、もう貯金も尽きてしまいまして。お恥ずかしながら、生活がままならなくて……」

ポツポツと事情を話してくれたその男性は、どうやらこの店の店主らしい。
材料が集まったらいつでも店を開けるように、店の掃除をしていたようだ。

「その足りない材料とは何なんだ?」

フェルディナンドが口を挟む。
すると店主はフェルディナンドの顔を見て、深くお辞儀をした。

「あぁ……大賢者様! またいらしてくださったのですね。パンを売れずに申し訳ありません。実は……パン作りに使用していた湧き水が、使えなくなったのです」


 
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