国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
店主の言葉にフェルディナンドは眉間にシワを寄せた。

「湧き水が枯れたのか?」
「いいえ、流量は変わりありません。ですが……味が変なのです。なんと言いましょうか……舌に触れると痺れるような感じで。とてもお客様にお出しするパンには使えないのです。あの水でないと、うちのパンは作れないのに……」

フェルディナンドの眉間のシワがますます深くなる。

「舌が痺れる水か……妙な話だな」
「調べに行きましょう。おじ様、場所を教えてください!」

店主はニーナの申し出に驚いていたが、すぐさま地図を持ってきてくれた。
パン屋からそれほど遠くない場所だ。

「もし解決してくださったら、山ほどパンを焼いてお返しします! どうか……」

店主はフェルディナンドの手を強く握り、頭を深く下げた。

「行きましょう、フェル」
「ニーナにパンを食べてもらうためには仕方がないな」

こうして二人は湧き水が出る場所へと向かうこととなった。



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