国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
思い返してみると、確かに今朝から力を感じられていなかった。もうニーナの中には聖女の力がないのだ。

あの少女が意図的に力を奪ったのは間違いない。

(それにしてもマリアとかいう男爵令嬢は、なぜここまでして聖女になりたいのかしら? そんなに良いものじゃないけど……)

自由もない。ただ人々に尽くすだけの聖女。貧民ならともかく男爵令嬢がなりたがる立場ではない。

(それに、彼女は単独犯じゃないわ)

この作戦には王子も加担しているはずだ。それだけじゃない。聖女についてよく知る大司教も手を貸しているに違いなかった。
聖女なんかになるために嘘を重ねる意味が、ニーナには分からなかった。

しかしその答えはすぐに得られることとなる。

人々がざわめいている中、王子がマリアの手をとって皆に掲げた。

「新たな聖女マリア。俺は今日、マリアと婚約することを発表する!」

その声に皆がわっと歓声を上げる。王子とマリアを祝福する声が大聖堂中に響く。

(あーそういうことかー)

ニーナは王子の言葉に合点がいった。

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