国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「大体ニーナは軽率すぎる。貴女が毒に侵されたら、誰が助けると思っているの? あいにく僕の治療は、聖女の治癒と違って痛みを伴うからね」
「肝に銘じます……でも、あのっ、飲んだおかげで分かったことがあるの!」

このままではフェルディナンドのお説教が終わらない。ニーナは謝罪をしつつ、話を逸らした。

ニーナの言葉にフェルディナンドが片眉をひょいと上げる。

「それは良かった。舌がしびれる原因を突き止められた?」
「そうなの。この水には小さな気泡が含まれているみたいなの。それもただの空気じゃないわ。通常この程度の気泡がはじけるだけでは、触った時や飲んだ時の違和感はないはず」

ニーナの言葉を聞きながら、フェルディナンドは湧き水を木の枝でくるくるとかき回して観察している。

そしてなにか確信をもったような表情でニーナを見た。

「それじゃあニーナは、この気泡の原因は何だと思う?」

フェルディナンドが湧き水をかき回すと、小さな気泡がパチパチとはじけた。
もう彼も原因が分かったのだろう。

ニーナは気が重たかったけれど、正直に口を開いた。

「瘴気よ。ルティシアにいた頃、見たことがあるわ。瘴気に触れた水はこのように気泡を含み、触れたり飲んだりすると、麻痺のような症状が現れる。少量なら毒というほどではないわ。痺れるような感覚は、時間とともに治まる。でも長時間触れたり、濃度の濃い水に触れると……皮膚が溶けてしまう。爛れた皮膚は赤いバラのように見えるのだとか」




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