国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
フェルディナンドは頷いて、水をかき回していた木の枝をポイと捨てた。

「僕も以前そのような話を旅人から聞いたことがあるんだ。この水はかなり薄い瘴気に触れたんだろう」
「確かにルティシアで見た時は、もっと気泡がぷくぷくと出ていたはずよ。この水はかなり気泡が小さいわね」

飲んでも麻痺の症状は出ない。
水の味をよく知るパン屋だけが、真っ先に違和感を覚えたのだろう。

すぐに大きな問題になる程ではないだろう。

「被害は出ていないが、放っておく訳にはいかないな。対処法を考えないと」

(聖女の力があれば浄化出来たのに……なんて。駄目駄目。今出来ることをちゃんと考えなきゃ)

ニーナはもどかしさを振り払うと、頭を回転させる。

「発生源を除去するのが一番なのだろうけど、湧き水の上流をたどるのは難しいかもしれないわ。周辺環境には異変がないようだし、まずは水の浄化方法を考えてみるのはどうかしら? 対症療法的だけど」

ニーナの提案にフェルディナンドは瞳をキラリと光らせた。

「良い考えだね。瘴気の発生源特定には人数が必要だし、兄さんにでも任せよう。とりあえず、色んな素材で浄水方法を検討してみようか」

声色がもう楽しそうだ。
早く色々試してみたいのだろう。フェルディナンドはうずうずしていた。

「そうね。まだ日暮れまでたっぷり時間があるし、一度塔に戻って水を汲める容器を取ってきましょう」
「よし決まりだ。ほらニーナ、早く塔に戻ろう!」


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