国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「ニーナ、出かける前にちょっといいかな?」
「どうしたの?」

朝食を済ませ、互いに出かけようとなった時、ニーナはフェルディナンドに呼び止められた。

フェルディナンドは少し言いにくそうに口を開く、

「今日の報告でニーナのことも話さなければならない。貴女がルティシアの聖女だったことや、国外追放されてここに来たことを。父は……僕の嘘を見逃さないから。僕一人の功績ではないと、すぐに気づくから」

フェルディナンドの父、つまりセレンテーゼの皇帝だ。

この大帝国を治める人物には、無計画な嘘や虚言は通用しないだろう。
それはニーナにもよく分かった。

(皇帝陛下ね。恐ろしい人だと聞いたことがあるけれど、フェルやマーティス様のお父様だもの。フェルを罰するようなことはしないはず。私にはもう利用価値はないし……別に大丈夫よね?)

「大丈夫よ。全部正直に言ってもらって構わないわ。フェルの一番弟子だってこともね」

ニーナが微笑むと、フェルディナンドは真剣な顔になった。

「父は時折突拍子もない事をするものだから、どうなるか分からない。でもニーナを困らせるようなことはしない。……ように、極力努力する」

いつものフェルディナンドからは考えられないくらい、歯切れが悪い。
慎重に言葉を選んでいるようだった。

「気づかってくれてありがとう。でも私はどうなっても大丈夫よ。皇帝陛下が何か仰ったら、ちゃんと従って。それより、フェルの立場が危うくならないようにするのよ。ね?」

ニーナはそう言ってフェルディナンドを送り出した。



「さて、私もパン屋さんに行かないと」

ニーナも浄水が完了した水を持って、パン屋へと向かったのだった。


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