国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「水が……素晴らしいです! この水なら、またパンを作れます!」

パン屋の店主は、ニーナの訪問に大変驚いていた。

湧き水が浄水出来たのだと伝えると、目に涙を浮かべながら喜んでくれた。

「良かったです。ノギリブナの炭の作り方は、ここに記してあります。水瓶に炭を三本入れて一晩待てば浄水されますから」

メモを記した紙を渡すと、店主は深々と頭を下げた。

「ありがとうお嬢さん! 大賢者様にもお礼を伝えてください。本当にありがとうございます……」
「はいっ! お店が再開したら、また寄らせてもらいますね」

ニーナはパン屋を出ると、そっと振り返る。
店の中では、店主が生き生きと忙しそうに浄水の準備を始めていた。

(おじ様嬉しそう……。良かったわ)


そのまま帰ろうとした時、ニーナのお腹がぐぅと音を立てた。
朝食を適当に済ませたため、もう空腹になってしまったようだ。

「何か買って帰ろうかな。昨日は結局買い物も出来なかったし。足りない食材を買い足しておきますか!」

市場へと向かうニーナの足取りは、羽のように軽かった。




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