国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
王子はマリアと密かに恋仲になっていたのだろう。だがマリアは下級貴族である男爵令嬢。立場が違い過ぎる。
マリアが王子と釣り合うためには、強大な力が必要だ。
聖女という立場はうってつけだろう。
現聖女が悪行を働き、新たなる聖女がそれを成敗する。そして皆を平穏へと導けば、その立場は強固なものになる。
平穏で退屈な日々を送っている民に大スキャンダルを提供し、それを解決することで鬱憤を晴らす。皆はヒロインとなった聖女を慕う。良いことづくし。
そういうことなのだろう。
(大司教様がこんな作戦に協力したのは意外だったけれど)
ニーナは王子の後ろに立っている大司教にチラリと目線を送る。
彼は無表情でどこか遠くを見つめていた。
「ニーナ・バイエルン。長く居座りすぎたな。ルティシアはお前のような老女に守られるような国ではない。新たな聖女マリアのもと、新たな歴史を築いていくのだ!」
王子の言葉にニーナはムッとした。
(老女って、あんまりじゃない? 確かに217歳ですけど。おばあちゃんですけど! でも、身も心も若いつもりですけど!)
ニーナが正式に聖女になったのは17歳の時。普通に年齢を重ねていたら217歳なのだ。
けれど容姿は当時17歳の頃のまま。
みずみずしい白い肌と腰まで伸びた艶やかな黒髪のニーナに、『老女』という言葉は不釣り合いだった。