国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
マリアはアレクサンドロスを見るなり泣きついてきた。

『何を言っているんだ! せっかく聖女になったというのに……』
『だって、ものすごく痛かったんです! 死んでしまいそうだったのです! 私は元々聖女になりたかった訳じゃないし、アレクサンドロス様と一緒にいるために、仕方なく聖女になったのですよ?』
『だったらもう少し頑張らないと』

アレクサンドロスが励ましたのに、マリアはぷいっとそっぽを向いた。

『ヒドイですっ! アレクサンドロス様が王妃にしてくださるって言うから頑張ったのに~』
『それはそうだが……』

マリアのためならなんだって出来る。
マリアが望むことはなんだってしてやりたい。

そう思っていたアレクサンドロスだったが、マリアのあまりの幼稚さにため息が出た。

『と、とにかく、しばらく休むと良い。まずは症状の軽い怪我人の治癒から始めたらどうだ? 力の消費が少なければ痛くないかもしれないぞ』
『そうでしょうか?』
『そうとも! 俺も頑張るから、マリアも頑張ってくれ』

そう言ってなだめると、縋り付くマリアを引きはがして逃げるように城に戻ったのだった。



それからマリアは何度か治癒や浄化を試したようだったが、すべて途中で中断してしまったと聞いた。
そしてしばらくすると、大司教から全国民に向けて異例の通達が出されたのだ。

『聖女マリアには療養が必要です。今は国民全員で痛みに耐える時期です。皆で神に祈り、聖女マリアの回復を待ちましょう』

国民は当然戸惑った。その戸惑いが嘆願書という形でアレクサンドロスに降りかかったのだった。


◇◇◇


「あぁマリア……早く本当の聖女になって、昔のように優しいマリアに戻ってくれっ!」

本来のマリアは、痛みなんかで取り乱すような女性ではない。
きっと聖女という立場に慣れたら、もとに戻ってくれる。

アレクサンドロスはそう信じていた。

「俺の愛しいマリア……!」



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