国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
『あぁ、アレクサンドロス様っ……! そうなったらどんなに良いでしょう。ですが私は下級貴族の身。貴方のそばにいる資格なんてありません。うぅ……ぐすっ、私の身分がもっと高かったら……例えば、私が聖女だったら……』

マリアの言う通り、男爵令嬢である彼女と結婚するためには、彼女に強力な後ろ盾が必要だ。

(そうか、聖女か……。その手があったな)

『俺に任せろ。俺がマリアを聖女にしてみせる!』

そう決心してから、アレクサンドロスの行動は早かった。


まず、大司教に何度も頼み込んで協力を仰いだ。
最初は渋っていたが、何度も話をするうちに協力してくれることになったのだ。

『今の聖女は聖女としての役割を放棄している。マリアの方が聖女に相応しい!!』
『分かりました。殿下がそんなに仰るなら……特別に配慮いたしましょう』

どうにか聖女を交代させるように仕組んでもらった。

聖女の力を吸い取るという石を使って、聖女からマリアへ力を移す。
そして聖女を陥れ、マリアを新たな聖女に祭り上げたのだ。

マリアも当然喜んでくれた。

『アレクサンドロス様と結婚できるのですか? 夢のようです……! え、聖女? もちろんやり遂げますわ!』

あの頃、マリアはうっとりとした目で喜んでくれていた。とてもいじらしくて、可憐な女性だった。

それなのに今は……

『結婚式はいったいいつなのですか?』
『どうして会いに来てくださらないのですか?』
『もう限界です。早く迎えに来て!』

嘆願書に混じって送られてくるマリアからの手紙は、アレクサンドロスの心をいっそう憂鬱にさせた。

(マリアは自分の都合ばかり気にしている。多少の痛みくらい我慢すれば良いだろう? この俺と結婚できるんだぞ?)


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