国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
結婚するまでの少しの間なのだから、マリアが堪えてくれれば全てが円満に収まるはずだ。

正式に結婚して妃になれば、聖女の肩書は必要ないのだから。

聖女なんて、別の誰かにあてがえば良い。
マリアと同じ要領で誰かに力を吸い取らせれば良いのだ。

(結婚式の日取りを早めようか……いや、お父様が許さないだろうな)

アレクサンドロスは父の顔を浮かべて首を振った。

彼は父である国王に対して、聖女交代の作戦を隠していた。
国王が全てを知ったのは、全てが終わってからだった。

『お前は何ということをしたのだ! 聖女を追放するなど……この国の根幹を揺るがす行為だ』
『ご、ご安心ください。すでに新聖女には力が宿っていることを確認しております。大司教も認めたのですから、問題はないはずです』

あきれ果てる国王に必死で説明したが、国王は頭を抱えるばかりだった。


――そして最終的には見放されたのだ。

『……まあ良い。私もいずれこの立場から退く身だ。新聖女とともに国民からの信頼を勝ち取りなさい。私は一切関与しない。この国の行く末はお前に任せるとしよう』

国王は聖女に関する全ての公務をアレクサンドロスに引き継ぐと、一切口出ししなくなった。
だから国民から嘆願書が送られてきた時、アレクサンドロスが対応する羽目になったのだ。

(お父様は昔から面倒ごとを避ける能力が高い。先に相談しておくべきだったんだ。そうすればこんな目に遭わなくて済んだのに)

「マリアは変わってしまった……。前は俺のことを気遣ってくれる心優しい女性だったのに。俺の孤独を分かってくれる唯一の女性だったのに」

アレクサンドロスの憎々し気な言葉は、誰にも聞かれることなく消えていった。



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