国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
用意が整ったところで、皆で森へと入っていく。
昨日の雨の影響で地面がぬかるんでいた。

転ばないように慎重に歩みを進める。


ニーナは森に踏み入れた時から、若干の違和感を覚えていた。

(この匂い……うっすらだけど空気に瘴気が混ざっているわ。この間来たときは、気づかなかった)

瘴気独特の焦げ付いたような苦い匂いが、ほんの少しだけ鼻をかすめる。

「ここ一帯はすでに瘴気が混ざっています。皆さんご注意ください」

ニーナの忠告に、一行の緊張感が高まった。

地形を見ながらゆっくりと奥に進んでいく。
森の中央あたりに差し掛かった時、ニーナは少し立ち止まった。

瘴気は依然としてほんのりとしか感じ取れない。

(なぜかしら? 森の入り口まで瘴気がきていたのに、どこまでも薄いまま。発生源が分からない……)

瘴気の発生源は黒い靄のようなものだ。誰でも目視できる。
発生範囲を考えればもう見つかるはずだ。

それなのに瘴気の濃度はいっこうに薄いままで、発生源が見つかる気配すらなかった。

ニーナは考え込みながら上を見上げた。木々の隙間から、うっすらと曇り空が覗いている。

(昨日は雨が降っていた……あっ!)

「皆さん、少し止まってください!」



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