国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「やはり効率的な使い方があるのか。本当に不思議な力だね」
「口伝で伝わる聖女の秘密って、なんかドキドキしちゃうねー」

反応は違えど、二人はニーナの言葉を聞きながら楽しそうに話し合っている。

(秘密ね。そんな面白いものじゃないけれど)

ニーナは聖女時代のことを思い返した。

(あれは相当痛いからなぁ……。基本的には我慢するしかないんだけどね。本来なら色々相談に乗るべきなんでしょうけど、私は追放された身だし。追放させた本人の相談に乗る義理なんてないわ)

新聖女マリアの顔が浮かんではすぐに消えた。
彼女の苦しみがどうであろうと、もう関係ないことなのだ。

「とにかく、ルティシアの聖女が不在ならば、国境の瘴気が浄化されずに残っているということでしょう? やはり今回の件にも影響しているかもしれません」

ニーナが話を戻すと、フェルディナンドが頷いた。

「その可能性が高いだろうね。発生した時期的にも一致する。一度国境あたりも視察しにいく必要があるかもしれない」
「それは俺が行ってこよう。フェルディナンドとニーナちゃんは、土の調査を優先して」
「分かりました。ニーナ、戻ったら手伝いをお願いできる?」

フェルディナンドが上目遣いでちらりとニーナを見た。

最近見慣れてきたはずのフェルディナンドが、見たことのない表情をしている。
ねだるような表情にニーナの心臓がドキリと小さく跳ねた。

「も、もちろん! 一緒に頑張りましょう!」

ニーナは頰が熱くなるのを誤魔化しながら、拳を突き上げた。


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