国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました
「ははっ、ルティシアを気にかけるわけないだろう? 僕は、ニーナを気にかけているんだよ」
「へ?」

フェルディナンドは驚いているニーナの手をそっと握ると跪いた。

「もう二度と貴女のように心優しい人が、利用されることのないように。もう二度と誰か一人だけが、依存されることのないように」
「フェ、フェル?」

フェルディナンドは戸惑うニーナの手を、彼の額にコツンと当てた。
まるで祈りを捧げているような姿だ。

「あぁ、ニーナが落ち込んでしまったのは、僕のせいだね。手伝いを依頼したから……」
「そんなことはないわ! あの、私まだ頑張れるから! 大丈夫だから! だからっ……!」

フェルディナンドがちらりとニーナを見上げる。
その瞳は強く光っており、一瞬目が合っただけで吸い込まれそうだった。


フェル、と名前を呼ぼうとした時、彼はくすくすと笑い出した。

「さて、少しは気分転換出来たかな?」
「へ? ……もう! からかったの!?」
「でも話した言葉は本心なんだよ?」

イタズラが成功したのが嬉しいのか、フェルディナンドの声がいつもより明るかった。

「知らないわよ! 急に手を握るからっ……」

言いかけてニーナは口をつぐんだ。
フェルディナンドが面白そうにニーナの顔を覗き込む。

「握るから?」
「……ドキドキしたの! もうっ、この話はお終いです! 私は作業に戻りますからっ」

赤い顔をごまかすように後ろを向くと、再度フェルディナンドに手を引かれた。


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