もう一度あなたと
そこまで思ったところで、どうして私が文句を言える立場にあるなんて思ったのだろう。そんな非難をできる立場ではない。

私にとっては日向はとても大切な存在だったが、日向にとってはそうではなかったということだ。

「どうしてここに?」
その日向の当然の問いに、私は少しどもりながら答える。
「明かりがついていたから、空き巣だったらいけないと思って」
こんな説明信じるだろうか。そう思うも意外にも日向は「そうか」とだけ言った。

「どうしたの? こんな夜更けに」
今度は私が問う番のような気がして彼を見れば、日向はゆっくりと庭を歩き出した。
真ん中には噴水があり、小道がある。その少し向こうには白亜の建物があった。
建物自体は昔のものだが、有名な建築家が手掛けたという屋敷は、ガラス張りのサロンに庭へそのまま降りられるテラスがあり、リビングはたくさんの日差しが入る明るい家だったことを思い出す。

そこにヨーロッパ調の家具が揃えられていて、そこで春子さんに、よく二人で本を読んでもらった。

そんな懐かしい記憶を思い出し、慌ててそれを消そうと頭を振った。
しかし、日向は小道を歩いて家の方へと歩いていく。
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