もう一度あなたと
それは日向も同じだったら、私は寺でもどこでも入って一生独身でもいい。
「そう、何人もの人と付き合ったんだよ。でも、誰ともできなかった。触れられると身体がカチカチになっちゃって」
「そうか……」
日向はこの赤裸々な告白に、少し困ったような表情を浮かべた。
「うん」
しばらく無言の時間が流れた。
「きっと、いつか心から彩華が好きだと思った相手ならそんなことないよ」
そう言うと、日向は持っていたグラスの中の赤ワインを飲み干した。
「久しぶりに彩華に会えてよかった。おばさんたちが心配するな。そろそろ……」
ソファから立ち上がった日向の後ろから、私はギュッと抱き着いた。
私より数十センチは高い身長。鼻孔を擽るムスクの香り。私が知っている日向とは違うのに、やっぱり日向だと心が叫ぶ。
「ねえ、お願い。面倒なこと言わないから。私を助けると思って一度だけキスしてみて」
「彩華、いい加減に……」
クルリと振り返った日向に、私は自らキスを仕掛ける。
カチッと歯が当たってしまい、色気も何もないキスに泣きたくなってしまう。
「ダメ? 私はやっぱり日向の中では子供のまま?」
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