もう一度あなたと
　結婚が決まった、その言葉に鈍器で頭を殴られたような気がする。あの時、瑠香を産んだときに、彼との未来は諦めたはずだった。でも、こうして再会して日向が誰かと幸せになるのを見るのはさすがにキツイ。
「だな、息子さんが亡くなった時は社長、かなり見る影がなかったって聞いたしな」
「え？　亡くなった？」
　つい、私は神代さんにそれを訪ねていた。
「ああ、もう随分昔の話だと思う。俺も部長から聞いただけだし。もう数十年経つんじゃないか？　その後、いきなり弟というあのジュニアが現れたらしい」
　急に現れたジュニアの話題に、みんな興味津々だ。でも私はどうしようという気持ちでいっぱいだった。
　日向にどんな過去があり、どうして姿を消して、今ここにいるのかはわからない。しかし、確かなことは、日向は結婚を目前にしていて、副社長に就任するということだけだ。実はあの時に子供がいたなど、スキャンダルにしかならない。なんとしても隠し通さなければ。
　そう思っていた矢先、部屋から部長と一緒にでてきた日向に、みんなが視線を向ける。

「みんな聞いてくれ」
　もうすぐ四十代半ばの事業部長の声に私たちは話をやめ、そちらを見た。
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