もう一度あなたと
 凛とした張りのある声に、漂うオーラは紛れもなくカリスマ性がにじみ出ていて、先ほどまでいろいろ噂をしていた社員たちも今は一様に、日向に釘付けだ。これがあの優しかった日向と同一人物なのだろうか。冷徹さすら感じるその雰囲気に息を飲む。まったく知らない人のような気がして、私はただ呆然と見ていた。
「神代君」
「はい」
 日向が神代さんの名前を呼び、ハッとしたように彼が返事をした。
「君がリーダーだな? この後打ち合わせをしたいが何分後からできる?」
「はい、二十分いただけますか? 東雲、資料出せるな?」
 神代さんが私に問いかけた時、一瞬日向が驚いたように目を見開いた。私に気づいたのだろう。まさかここに私がいるなんて想像もしていなかったに違いない。
「わかりました」
 心の中はパニック寸前だが、今狼狽したり何かがあれば瑠香のことがバレてしまうかもしれない。なんとか動揺する気持ちを抑え込むと、冷静にパソコンに視線を落としたまま返事をする。
「やばっ。若いのにすごいオーラだな。俺、こんなに緊張したの久し振りかも」
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