もう一度あなたと
「日向君、ごめんね! 西城総合病院よね。私たちも自分の車で追いかけるから」
 母は父と駐車場へと行ってしまった。車の中で眠る瑠香を見て不安で仕方がない。
「瑠香、ごめんね。ママいなくて」
 日向の腕の中で抱かれている瑠香に声をかけていると、日向が私を見つめる。
「大丈夫だ。落ち着け」
 その力強い瞳にひとりでないことが、これほど心強いことを知る。今までも熱を出したりしたことがあるが、いつもひとりで気を張っていたと思う。こうして横で瑠香を抱き、私を安心させてくれる日向。忘れていた昔から日向が好きで、欲しくて仕方なかった気持ちを思い出しそうになるのを、バカな考えだと頭から追い払う。今は瑠香に何事もないことを祈るのみだ。少しして、大きな西城総合病院の建物が目に入る。救急に車を付ければ、すでに待機していたのかストレッチャーを用意した看護師とドクターの姿が目に入った。
「彰斗、悪い。頼む」
 端的にそれだけ日向は言うと、白衣のドクターは柔らかな笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。きちんと見てくる」
 ドクターはそう言った後、私の方へと向く。
「お母さんですね、こちらで手続きを」
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