もう一度あなたと
 その言葉に歩き出そうとすると、日向が一緒についてくる。
「俺も一緒に行くから」
 今だけは甘えさせてもらおうと、日向と一緒に看護師についていく。その後、瑠香は頭部のMRIや足も見てもらい、問題がないと言われホッと安堵する。
「念のため、明日まで様子を見ますので、今晩は入院してもらいますね」
 家に帰って急変するよりは、一晩お世話になった方が私も安心だ。瑠香の無事を聞いた両親は、瑠香の寝顔を見て家へと戻って行った。
「副社長もありがとうございました」
 日向の計らいだろう、かなり豪華な個室を用意してもらってしまい、その廊下で私は恐縮しつつ頭を下げる。
「彩華」
 少し緊張したような声に、私はビクっと肩を揺らした。
「こんな時だけど、話してもいいか」
 先ほどのシングルマザーという言葉に引っかかりを覚えたのだろう。
「あの、費用のことですか?」
 あえて違う話題を出して、私は日向に背を向けて病室の引き戸に手をかけた。

「違う」
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