もう一度あなたと
意志の強いその瞳が、嘘をつかないことを私は知っている。だけど、今子供がいたからと同情されるなんて。日向の幸せを壊すなんてできない。泣きたくなるのをなんとか耐えると、日向は踵を返して歩き出した。
「明日の朝、迎えに来る」

そう言うと、日向は部屋を出て行った。姿が見えなくなり、私はその場に崩れ落ちた。初めてそこで涙が零れていたことに気づく。そして、さきほどの日向と瑠香の姿を思い出す。瑠香が父親に会ったり、抱きしめてもらうことを想像していなかった。
「こんな形で知られちゃうなんて……。瑠香、パパが抱っこしてくれたね……」

そう呟いて、私は涙を拭った。
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