もう一度あなたと
母のその明るい声に、たまらず声を上げていた。
「隣の家に住もうと思っています」
「え?」
まさかあの思い出の場所だなんて想像もしていなかった。しかし、もうずっと空き家のはずだ。
「でも、ずっと空き家じゃない」
そう私が問い掛けた時、初めて日向が私に向かって柔らかな笑みを浮かべた。
「すぐに住めるから。必要なものだけ用意して」
その後、両親を伴って隣の屋敷へと一緒に行く。多少人見知りのある瑠香だが、血のせいなのだろうか。あっさりと日向に懐き、今も彼の腕に抱かれている。
久しぶりに正門から家に入ると、そこは昔と違い一面グリーンの芝生が引かれていて、庭にはプールまであった。
「どうしたの……これ」
つい言葉が零れ落ちて立ち止まってしまうほど、そこは素敵な庭だった。
「こっちへ」
昔ながらの扉も、現代的なモダンなセキュリティ完備のドアに変更されていて、玄関から中へ入れば段差も最小限にされてリノベーションされていた。
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