もう一度あなたと
ポンと瑠香の頭に手をのせて笑う彼は、父親の顔をしている。
「日向……いいの?」
私の問いに答えることなく、日向は少し切なそうな表情をすると「行ってくる」と出て行ってしまった。
昔日向とずっと一緒にいたこの場所に住むことは私のあこがれだった。日向のお嫁さんになりたい。そんな夢を見ていた時期もあった。
でも……。
複雑な気持ちでいっぱいになる。
「マーマ?」
不思議そうに私を見る瑠香を、私はギュッと抱きしめた。

昼ごはんは母が用意をしてくれたおにぎりを、日向の家のテラスでみんなで食べた。瑠香の笑顔と両親の嬉しそうな顔。
これでいいのかもしれない。そんなことを思ってしまい、私は慌ててその考えを頭から消し去る。
午後から、日向が手配していた瑠香のためのおもちゃやベッドなどがこれでもかと運ばれてきて、リビングの一角はキッズコーナーになり、さっきは見ていなかったが、かなり広い寝室にはキングサイズのベッドと日向の書斎。ブラウンとブラックで統一された、高級ホテルのような部屋だった。
その扉をすぐに閉めると、隣の部屋のドアを日向は開ける。
「ここは彩華と瑠香の部屋」
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