もう一度あなたと
そう言われた部屋は、かなりの広さがありホテルのスイートルームのような部屋で、シャワーブース、ドレッサー、そして瑠香の小さなクローゼットやベッドなど至れり尽くせりだ。
先ほどみた寝室で一緒に眠るわけないのだが、少し安堵している自分がいた。
 
「じゃあ、私たちは戻るわね」
母の言葉に瑠香はバイバイと両親に手を振り、ここがすっかり気に入ったようだ。
「彩華、疲れただろ。夕飯は用意させてあるから、少し休め。瑠香は俺が見てる」
まだ物心がつく前でわからないとはいえ、当たり前のようにそう言ってくれる日向。何を考えているのかまったくわからない。
「ねえ、日向。どういうつもりなの? こんなのおかしいよ」
瑠香と真新しいおままごとセットで遊んでいた日向は、ソファに座る私に視線を向けた。
「わかってる、俺がすべて悪いのは」
「そんなことを言ってるんじゃない」
日向が悪いだなんてそんなことはまったく思っていないし、そんなことが問題なわけではない。
子供がいたからといってこんな早急に人生を決めるような結婚をするべきじゃない。それが伝えたいのに、日向は瑠香に微笑みかける。
「瑠香、パパって言って」
「パー?」
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