もう一度あなたと
「いや、初めは見えない瑠香の父親に、シングルマザーと聞いた後は神代かな。まさか瑠香を生んでくれていたことを知らなかったから、まさか父親が自分なんて思いもしなかったから……」
あえて瑠香の年齢も曖昧にしていたし、そう思われるような発言をしたのは私だ。
「ごめんなさい、私も一番初めに日向が来た時、婚約者がいるとかいろいろ噂を聞いたから。それに日向は私と瑠香のことなんて迷惑だと思ってた」
「そんなわけない。ずっと彩華を迎えに行くという目標だけで、海外の生活も耐えられたし仕事も頑張れたんだよ。あの家も彩華の許可ももらってないのにリノベーションしたりして」
真摯に紡がれる話に、とうとう私の目から涙が零れ落ちた。婚約者のためではなく、私を迎えに行くためにあの家も用意してくれたことに嬉しさが募る。
「日向とずっと一緒にいていいの?」
「ああ、ずっと俺は彩華のことが好きだ」
日向が私のことを思っていてくれた。その言葉が心に染みわたっていく。優しく日向が私の涙を拭い頬を包み込む。
ゆっくりと唇がふさがれて、その温もりにさらに涙が零れ落ちた。
「日向、ごめんね。ずっと好きだったの。瑠香のこと伝えられなくて」
< 69 / 80 >

この作品をシェア

pagetop