もう一度あなたと
 その意外なセリフに私は驚いてしまう。
「今日は預かってもらった」
「日向……」
 私のほうへと歩いてくる日向の熱を孕んだ瞳にドキッとしてしまう。気持ちが通じ合って以来、キスや抱きしめられたりすることはあったが、瑠香と三人で眠っていることもあり、私と日向は身体を重ねていない。
 厳密に言えば、あの過去の一回しかしていないのだ。それが寂しくもあり、子供を産んだ私はもう魅力がないのではと思っていたことは内緒だ。
 しかし、今日は新婚初夜。日向もそのことを考えていてくれた?
嫌でも意識してしまい、私はキュッと唇を噛んだ。
「嫌? 瑠香のところに帰る?」
 少し不安そうに聞く日向をちらっと見上げた。
「そんなわけない……」
「よかった」
 安堵の表情を浮かべた日向を、私はジッと見つめた。日向も少し緊張しているように見えて意外に感じる。
「日向でもそんな顔するんだね」
「うるさい」
 クスっと笑った私に、初めて日向が少し怒ったようでもあり、照れたような顔をした。
 そのまま私の手を取り日向は控室を出て、エレベーターへと向かう。
「泊るの?」
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