もう一度あなたと
 家に帰ると思っていた私だったが、まさかこのままお泊りができるとは思わず驚いてしまう。
 エレベーターが止まったのは最上階で、フワフワの絨毯にシックで落ち着いたインテリアが目に入る。
 すぐにホテルスタッフが迎えに来てくれて、部屋へと案内された。
 そしてその部屋に入った瞬間、別世界のようで立ちすくむ。
「すごい」
 目の前に広がる東京の夜景に私は声を上げていた。広いリビングは照明が落とされていて、夜景がキラキラと輝く。
「どの場所からでもこの夜景が見えるよ」
「そうなの?」
 景色に見入っていた私だったが、日向の声に振り返ればそっと唇がふさがれた。
 挨拶のように軽いキスをすることはあったが、すぐに深くなったキスに私は力が抜けていく。
 私の腰を支えながら、日向は何度もキスを仕掛けてくる。
「ずっと抱きたいって思ってたこと知ってる?」
 キスの合間の日向の声に、私は首を小さく振る。そんなそぶりはまったくなかったし、魅力がないのかと落ち込んでいたほどだ。
「じゃあ、そうしてくれたらよかったのに」
 つい不満のように漏れた本音に、日向はキスを止めて私の顔を覗きこむ。
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