もう一度あなたと
「私だって、日向に触れてほしかったよ」
 きっと顔は真っ赤だと思う。でも今までたくさんすれ違ったのだから、これからはきちんと伝えていきたい。
そんな私の気持ちが分かったのか、日向は満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ、今日は寝かさない」
 その言葉通り、私たちはあの日と違い、お互いの名前を呼び、気持ちを伝えあって何度も抱き合った。
ひとしきり抱き合った後、私たちは広い浴槽に浸かっていた。
目の前には日向が言っていたように、夜景がきらめいていた。
日向に自分の背中を預けてその景色を見ていた私だったが、不意に私のお腹に触れた日向にピクっと身体を揺らした。
「この傷、帝王切開の時のものだよな」
 先ほど抱き合った時に気づいたのかもしれない。私のお腹には数センチの傷あとが残っている。気持ちのいいものでもないし、見られたことに少し複雑な心境になる。
「ごめん、気持ち悪くない?」
 触れていた彼の手をその場所からどかしながら言えば、日向はギュッと私を後ろから抱きしめた。
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