離婚前提の妻でも溺愛されています
「町内会の会長に立候補するって冗談も言っていて、本当に楽しそうなんです」

「あいつが言うと、冗談には聞こえないんだよな」

車を走らせながら、蒼真も肩を揺らし笑っている。

里穂が実家を離れて以来、以前にも増して雫と恭太郞が店を手伝ってくれている。

里穂の帰宅時間を考慮して閉店時間を二時間ほど早めたのだが、少しでも早く里穂を帰宅させようと、協力してくれているのだ。

「恭太郞君、明日の朝が早いので今夜は雫たちのマンションに泊まるそうです。よっぽど楽しみにしているみたいですね。でも、ありがたいです」

本当なら自分が参加して佳也子のそばについているべきなのだが、恭太郞と雫がそれが当然だとばかりにふたりで参加を申し込んでいた。

『新婚さんはふたりでのんびりと温泉にでも行ってきたら? 蒼真なら色々知ってるし』

里穂も参加すると言うと、恭太郞は即座にそう言ってニヤリと笑っていた。

蒼真から結婚の理由を聞いていないので、ことあるごとに里穂をからかうのだ。

「俺たちも明日は出かけよう」
「温泉ですか?」

とっさに恭太郞の言葉が頭に浮かび、思わず声が出た。

「温泉? それも悪くないな。だけど、明日は行きたいところがあるんだ。なにか予定でもある?」

「いえ、とくになにも」

里穂は首をかしげつつ答えた。

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