離婚前提の妻でも溺愛されています
予定はないが、蒼真のために腕を振るっておいしい料理をつくろうとは考えていた。

「だったら明日はふたりで出かけよう」

結婚して依頼、休日にふたりで出かけるのは初めてだ。

「あの、出かけるって、どこに?」

そわそわする気持ちを抑えつつ問いかけると、蒼真は前方に視線を向けたまま。

「内緒。明日のお楽しみ」

楽しげな声を返してきた。

その後車が自宅に着くまで、里穂は車窓を流れる景色を眺めながら、口元が緩むのを我慢できなかった。





翌日、蒼真が里穂を連れて来たのは、車を一時間ほど走らせた郊外にある、ショールームだった。

ガラス張りの広い館内には数多くの陶磁器製の食器が展示されていて、中に足を踏み入れた途端、里穂はその美しさに目を輝かせた。

「ここって、最近オープンした?」

里穂はきょろきょろと店内を見回しながら問いかけた。

「先月だったかな」

里穂はやっぱりと、うなずいた。

ここは、九州で製作活動を続けている人気の陶芸家がオープンさせたショールームだ。

白地に藍色で描かれた模様が特徴で、清潔感がありスッキリとした見た目は以前から里穂も気になっていた。

かなりの賑わいだと聞いていたが、一階のショールームは大勢の人で混み合っていて、商品を眺めるのも難しい。

この様子だと、商品を販売している二階もかなり混んでいそうだ。

「すごい人気だな」

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