離婚前提の妻でも溺愛されています
「なにからなにまで蒼真さんにはお世話になりっぱなしで申し訳ないです。まさかあんな素敵な食器まで用意してもらえるなんて、本当にありがとうございます」

結婚し同居を始めてからというもの、何度も蒼真の優しさや気遣いに触れ感謝してきたが、今日ほどそれを実感したことはない。

千堂の食器を、蒼真は店の改装祝いだと言って注文してくれたのだ。

皿や椀、湯飲みや鉢など、ありとあらゆる食器を大量に。
その数二百点以上。

ショールームをあとにしてから二時間あまり。

里穂は今もまだ信じられずにいる。

自宅に戻る途中で立ち寄った海岸沿いのレストランで遅めのランチを楽しんでいるが、動揺が続いていて楽しむどころかハンバーグの味すらよくわからない。

「驚かせすぎたな、悪い」

すでに食事を終えた蒼真が、言葉とは逆に、楽しげにそう言った。

「実は改装が決まった時から考えていたんだ。あの食器はもともと気に入っていて、里穂の料理に合うと思っていたし。びっくりするとは思っていたが、予想以上だったな」

蒼真はいたずらがばれた子どものように顔をくしゃりと崩し、軽く肩をすくめた。

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