俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
結婚して以来、蒼真の優しさと気遣いのおかげで穏やかに、そして楽しく過ごしてきたが、それでもどうしてもふたりの間から消えずにいた壁に、小さいながらも風穴が空いたような気がした。

ふたりの距離がグッと近づいたと思うのも、錯覚ではないはずだ。

「もうひとつ、里穂に俺の気持ちを押しつけてもいいか?」

蒼真はテーブル越しに身体を寄せて、里穂をまっすぐ見つめた。

「はい?」

蒼真はゆっくりと席を立ちテーブルを回ると、戸惑う里穂の隣の椅子に腰を下ろした。

「蒼真さん?」

里穂はきょとんとする。

「片膝を突いた方が喜んでもらえるのかもしれないが、それは勘弁してほしい」 

「片膝?」

蒼真はクスリと笑うと、ジャケットのポケットからゴールドのロゴがあしらわれた黒いケースを取り出した。

「それって」

里穂は蒼真の顔とケースを交互に見やる。

「サイズは笹原に聞いたから、間違いないと思うが」

蒼真はわずかに不安を滲ませた声でつぶやくと、里穂の目の前でケースをそっと開いた。

「わ……」
 
目の前に現われた存在感のある大きなダイヤに、里穂は声を詰まらせた。

両サイドにいくつもの小粒のダイヤを寄り添わせ、四方八方に光を放っている。

「素敵」

里穂は初めて見る美しさにほおっとため息を吐いた。

ここまで近くで宝石を見るのは初めてで、その煌めきから目が離せない。

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