俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
「どう? 気に入った?」

「もちろんです。本物のダイヤなんて初めて見ました。え? でも、これは……」

我に返り、里穂は蒼真を見つめた。

まさかとは思うが、これはいわゆる――。

「婚約指輪だ。遅くなって悪い」

「やっぱり。でもどうして」

平然と答える蒼真を、里穂は混乱し見つめた。

突然のことに理解が追いつかない。
蒼真との新しい暮らしに慣れることだけで精一杯で、指輪のことなど考えたことがなかったのだ。

それにこの結婚はいずれ終わりがくる契約結婚のようなもの。離婚の可能性もほのめかされている。

永遠の愛を誓うわけでもない結婚に、婚約指輪が必要とは思えない。

蒼真の配慮はうれしいが、受け取っていいのかと混乱している。

「あの、婚約指輪は必要ないかと。この結婚は――」

「笹原に言われたんだよ」

里穂の迷いを察したのか、蒼真が口を開いた。 

「結納を省略するのは理解できても、婚約指輪をすっ飛ばすのは納得できないらしい」

「すっ飛ばすって、雫がそんなことを……あの子なら確かに言いそうです。すみません」

里穂は頭を抱えた。

結納に関しては、蒼真の両親が忙しくて時間が取れないので省略したのだ。

というより、もともと窮屈な行事ごとが苦手な杏が面倒だと拒否したらしい。

『里穂さんにも佳也子さんにも毎月会って仲良くしてるのよ。いまさら顔合わせの必要なんてある?』

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