俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
ケースの中で眩しいくらいに輝いていた指輪は、窓の向こうに広がる海面に反射した光を浴びて、さらに輝きが増している。

昼間なのに星が輝いているように見えるのが不思議で、まじまじと見つめた。

「よく似合ってる」

耳元に蒼真の声が響いた。顔を向けると、蒼真が吐息を感じるほど近くに顔を寄せて指輪を眺めている。

「凜としていて美しい里穂のイメージにぴったりだな」

「い、言いすぎです。私は別に」

「悪い、凜としていて美しくて、家族思いで優しい。だったな」

「冗談はやめて下さい」

クスクス笑う蒼真を、里穂は顔を赤らめ横目で睨む。本気で言っているわけじゃないとわかっていても、居心地が悪い。

「結婚指輪はふたりで選ぼう」

「結婚指輪?」

蒼真は力なく笑う。

「店で少し見せてもらったが、どれも同じに見えて選べそうになかったんだ。だからふたりで選ぼう」

「それは……」

婚約指輪に続いて結婚指輪。自分たちに本当に必要なのだろうか。

そんな思いが消えたわけではないが、これ以上雫のことで蒼真を困らせたくない。

「わかりました。ふたりが気に入る指輪を探しましょう」

食器のことといいこの婚約指輪といい、忙しい合間、里穂のためにわざわざ時間をつくってくれた蒼真の優しさで、胸がいっぱいになる。

里穂は蒼真が選んだ婚約指輪をもう一度目の前に翳した。

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