俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
落ち着いた色合いのグレーのセットアップに黒のポロシャツという幾分カジュアルな装いがよく似合っている。

「あの、今母から今日は講習会を欠席すると連絡があったんです」

「なにかあったのか? 足の調子でも悪いのか?」

顔色を変えて部屋に入ってきた蒼真に、里穂は苦笑しながらスマホの画面を見せた。

「母も恭太郞君も二日酔いみたいです」

「二日酔い?」

里穂は苦笑し、うなずいた。

「昨日の日帰り旅行のあとの宴会で飲みすぎたって雫が教えてくれました」

「あいつ……よっぽど楽しんだみたいだな」

「母もきっとそうです。久しぶりの旅行で羽目を外したんだと思います。飲みすぎで今日は欠席です」

「お義母さん、意外に飲むからな」

白い歯を見せ、蒼真はスマホを里穂の手に返した。

「だったら今日はお迎えなしで直接カフェに向かえばいいんだな?」

「あの、母がいなくても私、顔を出していいんですか?」

とっさに問いかけた里穂に、蒼真は怪訝そうな表情を浮かべる。

「いいだろ、別に」

「でも、私はいつも母の付き添いで講習会に参加させてもらっていて」

「それだけじゃないと思うけど? 最近は里穂のピアノを目当てに参加してる人もいるって母も喜んでたし、それに」

蒼真は意味ありげに微笑むと、ピアノの譜面台に置いていた楽譜を手に取った。

「これ、花音ちゃんからリクエストされた曲?」

< 115 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop