離婚前提の妻でも溺愛されています
里穂は首をかしげダイニングの椅子に腰を下ろした。

「突然部長を連れてきて驚いたでしょ?」

「そんなこと気にしなくていいのに。でも、想像していたよりカッコよくてびっくりした」

それに職場での雫の様子を知ることができて、安心した。

「でしょう? カッコよくて社内の女性たちから大人気。将来は社長だし、最強の御曹司」

「御曹司ってぴったりね。品があって育ちもよさそうで、女性に人気なのも納得」

「うん、次期社長で御曹司。ぴったりすぎる」
 
大きくうなずく雫に、里穂はクスリと笑う。

「御曹司にも色々なタイプの人がいるってこともわかった」
「もしかして恭太郞のこと? 確かに部長とは全然違うタイプよね。でもすごく仲がいいの。小学校から一緒にいるからわかりあってて羨ましいくらい」

 
淹れ立てのお茶を里穂の手元に差し出し、雫は肩を竦めた。

「小学校からの付き合いじゃ太刀打ちできないね」

「うん。今日出張のあと店に部長を連れて来たのも、恭太郞に頼まれたからだし」

「頼まれた?」
 
雫がわずかに表情を曇らせた。

「実は今日出張先の工場にまで常務が押しかけてきたの。お見合い相手の女性を連れてね。それを聞きつけた恭太郞から、イライラしてるだろうから部長にうちのおいしい料理を食べさせたいって連絡があったの」

「えっと、お見合い? わざわざ出張先で?」
 
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