離婚前提の妻でも溺愛されています
「お姉ちゃんの結婚式が終わって落ち着いたら、考えてみる。恭太郞は今日にでも結婚したいってうるさいし、そろそろ恭太郞を幸せにしてあげるのもいいかもね」

あっさりとした口ぶりとは逆に、雫の表情は今までになく明るく幸せそうだ。

里穂が結婚したことで、背負っていた重荷を下ろしたような、解放された気分なのだろう。

やはり、里穂に気兼ねして結婚を後回しにしていたのだ。

蒼真から聞くまでそのことに気づかなかった自分が情けない。

「恭太郞君なら、雫と一緒にいられるだけで幸せそうだけど?」

里穂がからかい交じりにそう言っても。

「そうなの。私がそばにいるだけで生きてるって感じるんだって。それだけ私のことが好きってことだけど、単純だよね。でも、そういう恭太郞だから私も好きなんだけど」

雫は照れることなく平然と答える。

恭太郞との関係に絶対的な自信と信頼があるのがよくわかる。

「羨ましい」

思わず零れた言葉に、里穂は慌てた。 

単なる便宜上の妻である自分が、正真正銘、本当の恋人同士の雫たちを羨むのは間違っている。

ここは雫が恭太郞と結婚する気持ちになったことを喜び、早く結婚できるようにもうひと頑張り。

とにかく背中を押すべきだ。

里穂はふとこぼれ落ちた言葉を振り払うように深く息を吐き出すと、丼にご飯をよそい、スパイスが効いた豚肉の煮込みをたっぷりかけた。

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