離婚前提の妻でも溺愛されています
訳がわからずにいると、恭太郞に続いて蒼真が顔を覗かせた。

「よっ話題の男」

恭太郞が大袈裟な動きでかけ声をかける。

「蒼真さん? 今日は会食って言ってましたよね」

蒼真が笑顔を見せる。

「先方の都合でランチに変更。今日はここに顔を出したかったからちょうどよかった。俺もなにかもらっていいか?」

「もちろんです。お魚もお肉も……なにを用意しましょうか」

ちょうど蒼真のことを考えていたところに本人が目の前に現れて、つい声が裏返る。

「里穂さん、俺は雫が食べてる……それってもしかして魯肉飯?」

恭太郞は、雫の丼を覗き込みながら、カウンターに腰を下ろす。

「そう。これはね、桐生家で流行ってる台湾料理。お姉ちゃんが部長のために作った特別メニューだから、心して食べてね」

「蒼真のための魯肉飯? そのネタいただき。明日も蒼真のことをあちこちから聞かれるだろうし、新ネタの投入だな」

「おい、いい加減にしろよ」

恭太郞の頭を軽く小突き、蒼真もカウンターに腰を下ろした。

「俺も魯肉飯ある?」

「大丈夫です。すぐに用意しますね」

頭の中に再び繰り返されたセリフのせいで、つい口ごもりそうになる。

〝俺が愛する女性を侮辱しないで下さい〟

何度思い出してもドキドキする。

蒼真を見ると、雫と恭太郞と三人で、スマホを眺めながら笑い合っている。

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