離婚前提の妻でも溺愛されています
たとえどれほど忙しくても、里穂に任せてハラハラするよりも自分が直接かかわり進める方が、よっぽど精神的にいいらしい。

「なにからなにまでありがとうございます」

里穂は立ち止まり、蒼真に深々と頭を下げた。

「俺が好きでやってることだから気にしなくていい。工事のことは俺に、恭太郞も張り切ってるが、任せて里穂は新しいメニューでも考えていればいい。今日の魯肉飯もうまかったし、常連さんも喜ぶんじゃないか?」

「考えてみます」

里穂は声を弾ませた。

手順的にはさほど難しいメニューではないが、使い慣れていないスパイスのバランスに苦労した。

「我が家でブームらしい台湾料理の第三弾も楽しみだな」

蒼真は楽しげにそう言って、里穂の顔を覗き込む。

雫から里穂が蒼真のために小籠包に続いて魯肉飯を用意したと聞いて、かなり喜んでいた。

よほど台湾料理がお気に入りなのか、今も期待に満ちた目で里穂を見つめている。

「本場に食べに行くのもいいな。町の雰囲気はささはらのあたりとよく似てるから里穂も気に入ると思う」

「行ってみたいです。本場でおいしいものを食べてみたいです」

それも蒼真と一緒だ、楽しいに違いない。

考えるだけでワクワクする。

「わかった、だったらふたりで計画しよ――」

「蒼真さんですよね?」

不意に聞こえてきた声に、里穂と蒼真は顔を見合わせた。

< 154 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop