離婚前提の妻でも溺愛されています
振り返ると、エントランスの脇からひとりの女性が駆け寄ってくるのが見えた。
セキュリティに配慮された敷地内は明るく、女性の顔もはっきりとわかる。
見ると、蒼真が呆然とした表情で女性を眺めている。
「蒼真さん、こんばんは。会社に伺ったら帰られたそうなのでここで待っていたんですよ」
「……は?」
女性は蒼真の傍らに立ち、ニッコリ笑いかける。
人形のようにかわいらしい、目鼻立ちが整った女性だ。
そろそろ日付が変わる時刻だというのにメイクには崩れひとつ見えない。
「こんな時間にいったいなんのご用でしょうか」
蒼真の固い声が響く。
「なんのご用って、決まっているじゃないですか。蒼真さんが結婚したって聞いて、びっくりして慌てて来たんですよ」
女性は切れ長の目で里穂を軽く睨み、バカにするように肩を竦めた。
「こちらがお相手ですか? あなた、古びた食堂の女将なんですよね。蒼真さんにつり合うとでも思ってるんですか?」
「え……? 古びた……?」
挨拶もなくいきなり毒のある言葉をかけられて、里穂は目を見開いた。
「蒼真さんも蒼真さんです。どうしてこんな女と結婚したんですか。見る目がなさ過ぎます。どうせ蒼真さんのステイタスを狙った女ですよ。早く別れて私と結婚――」
「麗美さん」
蒼真の冷たい声が女性の言葉をピシャリと遮った。
セキュリティに配慮された敷地内は明るく、女性の顔もはっきりとわかる。
見ると、蒼真が呆然とした表情で女性を眺めている。
「蒼真さん、こんばんは。会社に伺ったら帰られたそうなのでここで待っていたんですよ」
「……は?」
女性は蒼真の傍らに立ち、ニッコリ笑いかける。
人形のようにかわいらしい、目鼻立ちが整った女性だ。
そろそろ日付が変わる時刻だというのにメイクには崩れひとつ見えない。
「こんな時間にいったいなんのご用でしょうか」
蒼真の固い声が響く。
「なんのご用って、決まっているじゃないですか。蒼真さんが結婚したって聞いて、びっくりして慌てて来たんですよ」
女性は切れ長の目で里穂を軽く睨み、バカにするように肩を竦めた。
「こちらがお相手ですか? あなた、古びた食堂の女将なんですよね。蒼真さんにつり合うとでも思ってるんですか?」
「え……? 古びた……?」
挨拶もなくいきなり毒のある言葉をかけられて、里穂は目を見開いた。
「蒼真さんも蒼真さんです。どうしてこんな女と結婚したんですか。見る目がなさ過ぎます。どうせ蒼真さんのステイタスを狙った女ですよ。早く別れて私と結婚――」
「麗美さん」
蒼真の冷たい声が女性の言葉をピシャリと遮った。