離婚前提の妻でも溺愛されています
「だって、蒼真さんは今もお姉ちゃんのことが好きなんですよね」

麗美の言葉に、里穂は顔を向けた。

「お姉ちゃん?」

「もしかして、お姉ちゃんを忘れたくてそんな女と結婚したんですか? だったらお姉ちゃんに似てる私の方が蒼真さんを慰めてあげられるのに。だからやっぱり私と――」

「バカバカしい」

蒼真は呆れたようにため息を吐く。

「君のどこが沙(さ)耶(や)香(か)に似てるんだ。彼女は君と違って俺の立場に興味なんてない、自立した女性だ」

「沙耶香?」

麗美の姉のことのようだが、初めて耳にする名前に里穂は動揺した。

それに蒼真が今も麗美の姉を好きだというのは、いったいどういうことだろう。

思いがけない流れに理解が追いつかない。

おまけに改装の件で蒼真に全面的に頼りきっている自分と違って、麗美の姉は自立している女性のようだ。

会ったこともない相手とはいえ目の前の麗美以上に気になってしまう。

すると蒼真が里穂の耳元に「あとで説明する」とささやいた。里穂の戸惑いを察したようだ。

「なによ、私に面倒なこと全部押しつけて逃げたのに、みんなしてお姉ちゃんのことを誉めてばかりで気分が悪い。あ、そうだ」

麗美は高ぶる感情を抑えるように一度息を吐き出すと、蒼真と里穂を交互に見やり、ふんと鼻を鳴らした。

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