俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
里穂はたまらず蒼真を強く抱きしめた。
蒼真と一緒にいられる今が愛おしくてたまらない。
このままずっと蒼真の側にいたい。
この気持ちがなんなのか、気づかない振りをしてごまかすのはもうやめよう。
そんなこと、これ以上無理だ。
里穂は蒼真の胸に顔を押しつけ、蒼真の存在を確かめた。
想像していたよりも固くて厚い胸、心臓がトクトクと音を立てているのがわかる。
蒼真がここにいる、それを自分の身体全部で感じられることが、これほど幸せなことだとは想わなかった。
「里穂?」
くぐもった声が聞こえてきて、引き離されないようにさらに力を込めて抱きしめた。
お揃いのシルクのパジャマの滑らかさを頰で確かめながら、里穂は初めて知る多幸感に全身が震えるのを感じた。
毎晩同じベッドで眠っていても、指先すら触れ合うことのない夜は長すぎて寂しい。
同居して初めての夜、同じベッドで寝ても手は出さないと言われた時は蒼真の気遣いに感謝したが、そのうちそれは、切なさに変わっていった。
同じベッドに並んで夜を過ごしても、蒼真の体温に触れることなく朝を迎える。
それが寂しくて苦しくて、蒼真よりも早くベッドに入って寂しさが胸に溢れる前に眠りに落ちるように、固く目を閉じていた。
そして目が覚めた時にはいつも、手を伸ばせば届くのに伸ばせない距離に蒼真の寝顔がある。