離婚前提の妻でも溺愛されています
蒼真の瞳の奥に宿る感情を性格に読み取ることができない。
 
もしも蒼真が里穂と同じ気持ちではなかったら、里穂が好きだと伝えても蒼真を困らせることにならないだろうか。
 
根っからの真面目な性格が、今の今まで高ぶっていた感情に緩やかにブレーキをかけていく。
 
里穂は力なくうつむき、額を蒼真の胸元に押し当てた。

上からふたつみっつ、無造作に外されているパジャマのボタンが目に入る。
 
はだけたパジャマの襟元から覗く蒼真の鎖骨。

これほど間近に見るのは初めてだ。
 
里穂は引き寄せられるようにそれに顔を近づけ、そっと口づけた。
 
張りのある蒼真の肌の向こう側に控えていた鎖骨は、里穂のそれよりも大きくて堂々としている。
 
蒼真がなにも言わないことをいいことに、里穂はつたない仕草ながらもキスを繰り返す。
 
唇は順に場所を変え、蒼真の首筋を伝って顎のラインを確かめるようにリップ音を響かせ続ける。

「里穂っ」

くぐもった蒼真の声が里穂の耳元に届いた瞬間、里穂の身体はふわりと抱き上げられていた。

横抱きにされ、目の前には蒼真の熱を帯びた瞳。

里穂の鼓動が速度を増していく。

「やっと、その気になったようだな」

蒼真の低く艶めいた声に、里穂の身体の奥深くが反応している。

「その気……」
 
その意味なら里穂にもわかる。

「私……」
 
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