離婚前提の妻でも溺愛されています
里穂を抱く時は、彼女がそれを求めていると感じた時。

そう心に決めて、里穂を抱けるその日を待ちわびていた。

まさに今がその時だ。

そして里穂を抱きたいという、蒼真が初めて抱いた夢が叶う時。

「里穂」

蒼真はわずかに開いている里穂の唇に舌先で軽く触れると、かみつくような勢いで里穂の唇を奪った。

素早く舌を差し入れて、里穂のそれと絡ませ合う。

「ん……ふっ」

すると里穂は目を見開き、蒼真を見つめた。

初めて知る乱暴とも言える感覚に驚き、どう応えればいいのか混乱しているようだ。

ゆっくりと里穂の唇を解放した蒼真は里穂の頰をゆっくりと撫でる。

「嫌じゃなかった?」

キスだけで高ぶる身体をどうにか落ち着かせて声をかけると、里穂はためらいがちに首を横に振る。

「……大丈夫です」

はじらうように顔を背けた里穂の、かすれた声。

その言葉の裏に、物足りないという訴えが滲んでいると感じたのは、都合のいい勘違いだろうか。

「里穂、いいか?」
 
逸らしていた視線を迷いのない動きで蒼真に向けて、里穂は「はい」と答える。
 
その躊躇のなさに、なんのことを言っているのか本当に理解しているのか蒼真は不安になる。
 
それでももうこらえきれない。
 
手を出さないという言葉を信じる里穂を裏切らないよう自制しながら耐えた夜。
 
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