離婚前提の妻でも溺愛されています
里穂が蒼真を求めていると感じた今、そんな苦しい夜をこれ以上重ねるつもりはない。
 
蒼真は里穂の目尻にキスを落とすと、優しく微笑んだ。

「里穂と結婚できてよかった」
 
自然と口からこぼれ落ちた蒼真の言葉に、里穂はくっと息を止めた。

熱で潤んだ大きな瞳がさらに大きく開き、蒼真をまっすぐ見つめている。
 
信じていいのかどうか、蒼真の瞳の奥から答えを引き出そうとしているようだ。
 
蒼真はふっと息を吐き、里穂を安心させるようにうなずいた。

「俺の妻になってくれて、ありがとう」
 
里穂はゆっくりと表情をほころばせ、身体から強ばりが消えていくのが明らかにわかる。
 
それが合図のように蒼真は勢いよく里穂の首筋に顔を埋め、甘噛みを繰り返す。

「あっ」
 
初めて知る痛みに耐えながら、里穂は何度も鼻にかかった声をあげている。
 
その声がたまらなく愛おしい。
 
蒼真は首筋から胸元へと唇を這わせ、心地よさそうに顔をしかめる里穂の口から何度も声を引き出した。
 
初めての里穂を気遣わなければと頭ではわかっているものの、理性では抑えきれないほどの欲が溢れ出して、身体がいうことを聞いてくれない。
 
それどころかまだまだ里穂の声や吐息を引き出したくて仕方がない。
 
そんな欲望に従順な一面が自分にあることを、蒼真は初めて知った。

「大切にする。里穂が嫌がることはしない」

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