離婚前提の妻でも溺愛されています
「だから、心配しすぎです」

里穂は軽い口調でそう言って明るく微笑んだ。

「それに私、蒼真さんが考えているより強いんですよ。だからあれくらい平気です」

まるで自分に言い聞かせているみたいだと心の中で苦笑しながら、里穂は両手を伸ばし蒼真を抱きしめた。
 




翌日の午後、里穂は改装後の住居部分に設置する水回り設備を選ぶためにショールームを訪れていた。
 
雫も一緒に選びたいと言って午後から休みを取り、佳也子とともに顔を見せた。

「これ、お湯の温度が下がりにくい浴槽だって、よさそうだよね」

浴槽のコーナーを順に見て周りながら雫がはしゃいだ声をあげている。

「テレビにオーディオ付きも外せないかも。部長が用意してくれた今のマンション、両方ついていて楽しすぎるもん。今までのお風呂にはもう戻れない」

真剣な顔でつぶやく雫の隣で、佳也子もうんうんとうなずいている。

「ふふっ。実は私もそうなの。テレビを見ながらゆっくり足のマッサージができるし毎日お風呂が楽しみ。キッチンも広くて使いやすいのよ。休憩用の椅子を置いても邪魔にならないし、本当、助かってる」

雫と顔を見合わせて笑う佳也子の生き生きとした表情に、里穂は目を細めた。
 
蒼真が仮住まいに用意してくれたマンションは住み心地が抜群で、ふたりは快適に過ごしている。
 
ふたりで暮らすには十分すぎる4LDKという広さ。

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