離婚前提の妻でも溺愛されています
築一年で設備はどれも新しく、使い勝手もいいらしい。
 
今まで住んでいた築三十年以上の家に比べればどの設備も快適に違いなく、今もショールームのあちらこちらに足を運んでは、うっとりしながら選んでいる。

「いいお部屋を用意してくれてありがとうって蒼真さんにくれぐれも言っておいてね」

「うん、わかってる。ちゃんと言っておくね」
 
不意に蒼真の名前を耳にして、里穂はドキッとする。
 
昨夜初めて抱かれて以来、蒼真のことが頭から離れず、今も声が裏返りそうになった。
 
その後一時間近くショールームの中を見て回ったが、結局、なにひとつ決定できていない。

「多すぎて、選べないよね」

雫が小さく息を吐き、困り顔でつぶやいた。
 
案内の女性から説明を受けても、どれも機能的で素敵な設備ばかりで目移りし選べない。
 
それになにより、どの設備も素晴らしいだけあって価格も素晴らしく高価。
 
テレビやオーディオがあればどれほど有意義でも、そしてキッチンのカウンターが広ければ使い勝手がよくても。

「どう考えても高すぎる」

雫は顔をしかめた。
 
結局、予算内に収めるのが難しく、最終的に採用できないのだ。

「電化製品も新しくするし、なかなか厳しいわね」
 
残念そうな佳也子に、雫も「そうだねー」と相槌を打つ。

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