離婚前提の妻でも溺愛されています
「俺は里穂の夫だろ? 頼られるのも甘えられるのも当然。気にするな。それに里穂のためならなにをするにしても苦じゃないし、なんでもしてやりたい。もっと頼ってほしいし甘えてほしいんだ」

「蒼真さん、でも」

どう受け止めても甘さが混じる言葉に、里穂は頰を染め言葉を詰まらせた。
 
蒼真の人柄のよさと優しさには慣れたつもりだったが、まだまだだった。

「だからここは、俺に甘えてくれないか?」

力強い声に、里穂はいっそう顔を赤らめ、蒼真をただ見つめ返す。
 
弧を描いた唇が目に入り、昨夜何度も交わした口づけを思い出す。
 
その瞬間、顔だけでなく身体のどこもかしこも赤くなったような気がした。

「まあ、まあ。ふたりとも、そんなに見つめ合っちゃって、結婚の挨拶の時よりもラブラブなのね」

佳也子の弾けた声に、里穂は我に返る。

「わかりました。里穂への愛情だものね。こちらの設備の費用についてもお世話になります。ただし返済は前回同様ゆーっくりでお願いしますね」

「母さん……」

戸惑う里穂に、佳也子は大きな笑顔を見せた。

「素敵な旦那様ね。私もパパに会いたくなっちゃったわ。でもそれはまだまだ先ね。せっかくだからテレビ付きのお風呂を十分楽しんでから会いに行かなきゃ。あと三十年くらい先かしら」
 
肩を竦めて笑う佳也子につられて雫もクスクス笑っている。

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